【藤本タツキ 著】ルックバック【全1巻】
もう名作量産機と化している作者【藤本タツキ】氏による、全130ページほどの漫画【ルックバック】。
例にもれずこの作品も名作でした。
内容は、自身に絵の才能があると思い込む少女【藤野】と、同じクラスで引きこもって学校に来ないでいる【京本】の二人の物語。
常に謎の自信に満ちている藤野と、全く自信のない正反対の二人は【漫画】を介して結びつく。
やがて年月が経ち、二人の関係に変化が訪れ……
これ以上はネタバレになるため、内容について深く触れるのはやめておきます。
ただ、漫画内で扱われる事件が、実際にあった事件をモチーフとしていることはあきらかで、今生きている我々の世界とどこかで交差している。
さらに現実の人間と登場人物の類似性や作者の立場などを想像すると、物語の世界をどこまでがフィクションで、どこからがノンフィクションかという境界を曖昧にする。
そして一層作品にのめり込んでいくこととなる。
私は読み終わった時、泣き疲れたかのような感覚をおぼえた。
まるで一つの人生を追体験したかのような、強い疲労感があった。
それだけ、この漫画に共感をおぼえていたのだと思う。
これだけ物理的に薄い作品で、ここまでの没入体験をさせる【藤本タツキ】氏の才が恐ろしい。
個人的には最初【ファイアーパンチ】を読み始めた時
「とりあえずタブーを突っ込みまくっただけじゃん」なんて思った。
しかし、気付けば彼、あるいは彼女の描く世界にまんまとハマっていた。
この先、この【藤本タツキ】氏はどんな作品を生み出していくのだろうか。
一生追いかけ続けたいと思わずにはいられない。
そんなことを思わせる、まごうことなき名作でした。
この作品を読まないなんて言う選択肢はないと言い切りたい。
この機会にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
著者:藤本タツキ
出版社:集英社
掲載誌:少年ジャンプ+
1巻初版:2021年9月8日